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インタビュー by ORIGINAL CONFIDENCE LDH五十嵐社長
Styling/菊池大和(StyleLAB.)
衣装協力/MW(ムウ) TEL 03(5728)6600 東京都渋谷区猿楽町2-7、オンロータス TEL 03(5785)0991 東京都渋谷区神宮前2-33-12 ビラ・ビアンカ603
株式会社LDH
http://www.ldh.co.jp/
代表取締役社長
五十嵐 広行氏(EXILE HIRO)
いがらし ひろゆき
89年テレビ番組『DADA』のダンスコンテストでLMDに参加。90年LMD改めZOOとしてシングル「ケアレス・ダンス」でデビュー。
91年ベル・ビブ・デヴォーのツアーに参加後、ダンスユニットJapanese Soul Brothersを結成し、ボビー・ブラウン、DREAMS COME TRUEのツアーにサポートメンバーとして参加。96年ZOO解散後、97年J Soul Brothersを結成。01年J Soul BrothersからEXILEに改名、「Your eyes only~曖昧な僕の輪郭~」でデビュー。EXILEのリーダーであり、(株)LDHの代表を勤める。
インタビュー
LOVE・DREAM・HAPPINESSの頭文字を合わせたLDHは、アルバム『EXILE LOVE』がミリオンセラーを達成したEXILEの所属事務所。しかし、マネージメントにとどまらず、MD、デザインから販売を網羅するアパレル、スクール等々、業務を拡大中。その現状と展望を、EXILEリーダーHIROことLDH代表取締役・五十嵐広行氏が語る。
Photo/Shinya Yamada
Styling/菊池大和(StyleLAB.)
衣装協力/MW(ムウ) TEL 03(5728)6600 東京都渋谷区猿楽町2-7、オンロータス TEL 03(5785)0991 東京都渋谷区神宮前2-33-12 ビラ・ビアンカ603
――『EXILE LOVE』がミリオン達成、おめでとうございます。
五十嵐:ありがとうございます。正直、ミリオンは狙っていました。CDが売れないこの時代、ミリオンヒットというのはインパクトがあるので。そのために自分たちができるあらゆることを詰め込みました。
――ミリオンを狙うとき、どのようなアルバムにするか、どのような広告展開をするか等々のため、マーケティング資料を活用されることはありますか。
五十嵐:僕は一切見ません。当然、LDHやavexのスタッフは、そうしたデータもインプットしているでしょうが。長くこの世界にいるから、僕は皮膚感覚。かつデータは自分の経験としてむしろタイミングに拘ります。いつどのようなツアーをするか、どのようなCDやDVDをいつ発売するかとか。たとえばパフォーマンスやダンスの場合、同じ動きでもタイミングや流れにより、それが輝くか否かが決まるわけです。タイミングを外すと、何の意味もなかったり、逆に格好悪くなったり。実際、ステージを作るときは、そこを強く意識しますから。それと似ているかもしれません。
――EXILEの08年を<PERFECT YEAR>と位置づけた理由をお聞かせください。
五十嵐:これまでもテーマを掲げやってきましたから。標語ではないですが、こうしたわかりやすいテーマやキャッチフレーズを掲げると、僕自身やEXILEとしても、あるいはLDHやrhythm zoneのスタッフ一同も常に意識できるし、意識がブレない。でも、闇雲に言葉だけを掲げても虚しいだけだから。いつも1年先や2年先を見据え、自分たちはどうなっていたいかと、理想を持って生活してないと、全体を引っ張るだけのテーマは生まれないので。僕の場合、EXILEのことを考えない日は1日もない。その愛情から、いろいろなアイデアも生まれていると思います。
――ユーザーへのアプローチとしても、テーマを掲げることは有効だとお考えですか。
五十嵐:ええ。奇麗事ではなく、ファンと共に歩むのがアーティストの宿命だから。ファンが喜ぶことは積極的に提示すべきで、ある意味、僕はEXILEファンというスタンスもすごく持っています。その視点から、こうしたら鳥肌が立つだろうとか日々色々なことを考えます。EXILEはツアーで次の計画を宣言するスタイルを築いてきましたが、そのことにしても僕が一観客だったら、次はどんな展開か、ツアーの中の良いタイミングで宣言したほうが、さらにワクワクすると思ったからです。
――しかし、人気を得たり、キャリアを重ねると、ファン心理を忘れがちなのが常ですが。忘れないための術をお持ちですか。
五十嵐:1つは、本当に心から“ファンと共に歩む”と思えるか否かではないでしょうか。僕らは本気で思っているから、そこを無視して計画を進めることはあり得ません。もう1つは、先述のテーマを掲げること。そのテーマと現時点の自分を比べたとき、自分はまだまだ成長や向上しないといけないと実感するものだから。それは初心を忘れないことにもつながると思っています。
――EXILEのリーダーかつLDHの代表取締役として、オルガナイズする場合、テーマ設定以外の方法論をお持ちですか。
五十嵐:特に意識していませんが、あえて言うなら、非常に人間的なところかもしれません。嘘をつかない、卑怯なことをしない。そもそも僕には、むりやりまとめなければならない意識もあまりないし。まとめるとは、ある意味、枠にはめることでもあるので。EXILEはデビュー7年、LDHは設立から約4年。どちらも規模を一歩一歩拡大しているところ。拡大とは枠にはまらないことでもあるし。その広がりを支えているのは、ひとつひとつの信頼です。ひとりひとりへの信頼。1対1での信頼。1日1日ひとつひとつの出会いの積み重ねの結果が今だから。自然増殖というか。LDHやEXILEを支えているのは、管理術とかの作為的なことより、とても人間的なところだと思っています。
――EXILEあるいはLDHは、トップダウン型ではなく、ミーティング型との情報もありますが…。実際はどうでしょうか。
五十嵐:基本は、ミーティング型です。特にEXILEについては、誰もが同じだけの権利を持っています。1票の格差はありません。ただ、テーマとかそういうものをあれこれ考えるのが僕は好きだから、僕が口火を切る場合が多くなりますが。好きだから断片的な言葉でもメモで残したり、自分の中にインプットして貯めておくよう心がけてはいます。しかも、せっかちだから思いついたら言わずにいられない。だから、いろいろアイデアをメンバーやスタッフに投げかけますが、それぞれの表情や空気で乗ってるか否か判断できます。そこは阿吽ですね(笑)。
――<PERFECT YEAR>と銘打った今年、5大計画を宣言されました。その筆頭に<ベストアルバム3枚リリース>と記されています。
五十嵐:TAKAHIROが加入(06年9月)前の楽曲を、TAKAHIROとATSUSHIが歌い直したバージョンは、自分がファンでも聴きたいですから。発想の原点はそこです。でも、インパクトは間違いなくありますよね。ちなみに3枚のそれぞれがどういう意味を持つのか、どういう内容になるのかは徐々に明かされていく予定です。アルバム単体では考えません。このベストアルバムに限らず、何をするにしても常にその先の何かとリンクする発想をします。EXILE MOBILE(メンバーのブログなどが掲載されている携帯電話サイト)の会員も26万人を超えましたし、そことの連動も計画中。<PERFECT YEAR>の5本柱や、各メディアを総合することで、ファンの人たちは年間を通じ、多角的にEXILEを楽しめるということです。
――5大宣言の中には、<劇団EXILES 5月公演決定>もありますが。昨年5月結成の劇団EXILESですが、その拡散的アイデアはEXILE結成時点からあったものですか。
五十嵐:具体的な“劇団”という話は、結成当時にはありませんでした。ただ、もともと演技に興味のあるメンバーもいましたから。04年にミュージカルをやったときも、役者としての道を模索する姿からも、本気さが伝わってきたし。MAKIDAI(眞木大輔)は、3月からのNHK連続テレビ小説『瞳』に出演できるところまで漕ぎつけましたし。そういう流れもありつつ、劇団とEXILEという真逆な組み合わせの面白さやインパクトにも惹かれ、去年の9月に旗揚げ公演を行いました。続けることによりここからまた新しいエンタテイメントが芽吹くかもしれないと期待しています。もちろんさまざまな舞台の演出やプロデュースを手がけてこられた岡村俊一さんとの出会いが大きな要因であることも事実です。それにLDHの若い俳優たちが腕を磨き、世に知られる場にもなるわけで。EXILEもLDHも夢を叶える、夢が叶う場所でありたいというのが信条ですから。チーム、グループ、会社というより場所というイメージが強いです。結束力は不可欠ですが、みんなを束ねよう、まとめようと特別に意識しないでいられるのも、この場所感覚のおかげなような気がします。場所の提供がLDH代表としてもっとも重要な仕事という認識です。
――5大宣言に<月刊EXILE 夏創刊>ともありますが。これは自前の媒体を持つという発想でしょうか。
五十嵐:EXILEだけのプロモーションツールにする気はさらさらなくて。LDH独占みたいなことも考えていません。EXILE側からすると、誰もやったことのないエンタテイメントに挑戦できる場と捉えています。もしかしたら、メンバーの誰かがそこで新たな夢を見つけるかもしれないし。一方、編集側にしたら、EXILEを使い面白いことをやってやろうという場所だろうし。場所ですから、どう使ってもらってもいい。ただし、“どう使ってもらってもいい”と言えるところまでの深いコミュニケーションは必要。言葉を交わし、語り合い、この人なら間違いないと思える人にしか頼まないから。劇団の演出家、雑誌の編集長、LDHのアパレル事業のデザイナーにしても。
――オリジナルアニメーション<エグザムライ 本編発売>も5大宣言の目玉ですね。
五十嵐:きっかけはLDHの若手俳優の一言でした。「今、アニメがヤバイっす」と。居酒屋だったと思いますが。アニメに興味がなかったのですが、話を聞くと面白そうで。彼の知り合いのアニメクリエイターの方々に会いに行くことになりました。で、話せば話すほどアイデアが膨らみ、やるしかないと。
――若手が思いを話せる距離感、若手の声に耳を傾ける柔軟性、実際に会いに行くフットワークの軽さ等々、ひとつの事象からも成功へのキーワードがいくつか読み取れますが。
五十嵐:若い子たちにしたら、僕と話すときはそれなりに構えているのかもしれませんが、僕自身は彼ら彼女らとの間に壁は感じていません。友達感覚で話をします。僕は今、38歳ですが、20歳そこそこの人とも話は合うし。とは言っても、若者の流行に敏感でいようとか、リサーチしてるってこともないし。知らない事は素直に訊きます。何それ?と。だけど、若い連中のすべてを称賛しているわけでもなくて。話ながら、“そこは負けない”と、熱くなる自分もいますから(笑)。
――そして、<PERFECT YEAR>を締めくくる年末の<ドームツアー>も宣言されましたね。
五十嵐:圧倒的なエンタテイメントをドームツアーではお見せしたいと思っています。観客の度肝を抜くような。05年、GLAY×EXILEをやったとき、僕らのコンサートにサプライズゲストとしてGLAYに出てもらったことがありました。あの登場の瞬間の歓声、これこそ僕が求めていた究極のエンタテイメントだと実感しました。それはつまり、野球なら9回二死満塁逆転ホームランの瞬間、ボクシングならKO、サッカーの劇的なシュートとかと同じ歓声。それを僕らのステージでも起こすことができたらというのが、僕のエンタテイメントに対するテーマです。だから、そこに近づくため、いろいろなことを考えながらステージを作ってきました。ドームツアーでは更に頭も体も使うだろうし。演出というより、いかに観客になりきって発想できるか。小さなクラブからアリーナまでの経験上、ひとつ確かなのは、あの歓声もあの鳥肌も“溜めが大事”ということ。ダンスやパフォーマンスも同様。活動そのものにも当てはまるだろうし。溜めがあるということは、つまりメリハリがあるということ。たとえばEXILEのような派手な世界にいる自分たちでも、ステージに上がるためには、汗をかいて努力するわけで。バブルの頃のようなハッタリはもう通用しませんよ。それより一生懸命や努力が認められる時代。事実、僕らは本気で汗をかいています。そのリアルなところが支持されているのかなと。リアルということは変わる可能性もあるということ。一生懸命や努力は変わらないにしても、EXILEもLDHもテーマや形を固定する必要はない。長所を伸ばせば、その形が変わるのが自然だし。変わることがリアルでもあるから。
――LDH所属のEXILE以外のアーティストに対し、どこまでコミットされていますか。
五十嵐:所属アーティスト全員のプロデューサーになろうとは全然思っていません。接し方としては、先述のとおり、嘘もつかないし。無理なことは無理と言います。美味しい話でごまかしたりしない。卑怯なこともしない。たとえLDHを辞めても、いい酒が飲める関係であれば、相手にとって僕はブレーンのひとりだから。僕をうまく使えばいい。だから、事務所的に強制しませんが、自分で勝ち取れよと叱咤激励はします。のし上がる場所は、できる限り提供しているつもりです。アドバイスもします。でも、最終的に本人の力で勝ち取る以外に道はないと思っています。
――LDHは、エンタテイナー育成スクールEXPGも運営されていますが。従来の専門学校との違いはどこでしょうか。
五十嵐:これはビジネス云々より、僕らのダンスシーンへの恩返しの意味合いが強い事業。もちろん新しい才能の発掘の場所でもありますが。同時に僕ら自身が若い才能から刺激を受ける場所になる。それがEXPGの位置づけです。そもそもはこれも出会いと信頼から広がりました。東京で始め、次が宮崎。なぜ宮崎かと言うと、そこに信頼の置けるダンサーがいたから。そうしたつきあいが基本にあるから、非常に手作り感が強いですね。もしも僕が今、20歳くらいでプロのダンサーを目指していたら、絶対に通います(笑)。なぜなら、EXILEメンバーも時間を見つけ、直接コミュニケーションをとってますから。そこで認められる可能性もあるわけで。EXILEのコンサートで踊れるチャンスが転がっているようなものだし。ましてやLDHの場合、本当にその人と相思相愛になったらいきなりデビューへの道が拓けることもあり得ますから。
――先ほど、“LDHは規模を一歩一歩拡大しているところ”とのお話がありましたが。アパレル業務も相当な充実度のようですが。
五十嵐:僕自身、もともとファッションに興味がありました。でも、これも出会いがきっかけです。デザイナーとの。この時代、アーティスト活動とは、CDや楽曲制作やコンサートだけに限定されるものではありませんから。好きな服を着たければ、それを作るのもアーティスト活動の一環、ジュエリーデザインもEXPGのようなある種の社会還元も同様。と言うように、人との出会いにより場所を1つ1つ増やしていたら、その点と点が今やっと線で結ばれる段階まできたということでしょう。視点を変えると、アパレルだったら、ビジネス規模はLDH的にかなり大きい。すると、デザイナーもまた、LDH所属アーティストという認識になります。
――そうすると、デザイナーを中心点とした新たな広がりも発想できるわけですね。
五十嵐:そうです。LDHは、EXILEブランドを各方面に展開して大きくなっている会社であるのは事実ですが、そこで学習したノウハウは他でも応用できるのではないかと思います。でも、EXILEブランドがこの先まだまだ輝き続けるためにも、俺たちは何をすべきかと、常にメンバー同士で意見を交わしています。
――では、最後になりますが、エンタテイメントにおいて最重要なエレメントは何でしょうか。場所ですか、タイミングですか…。
五十嵐:もっとも大事にしたいのは人です。場所も人がいないと空き地だし。信頼も人があってのことだから。すべては人から始まるし、人を大事にしないところには、素晴らしいエンタテイメントも生まれない。それはもしかしたら、僕が歌えないとか、ダンサーだったことが大きく影響しているかもしれません。人と一緒にチームを作り、場所を作らないと何も始まらなかったから。もしも僕がちがう立場だったら、そういう所には気付きづらく、自分中心型の発想になっていたかもしれませんね。
(インタビュー・文/藤井徹貫)

