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インタビュー by ORIGINAL CONFIDENCE 日本レコード協会 古澤副委員長

Date:2008/05/09
写真:古澤 清氏
Photo/Shinya Yamada

(社)日本レコード協会 マーケティング委員会 副委員長
(株)ソニー・ミュージックディストリビューション 代表取締役

古澤 清氏

ふるさわ きよし
55年、東京下町の本所生まれ。79年大学卒業後、CBSソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)入社。01年、(株)ソニー・ミュージックディストリビューション第1販売推進部部長を務め、02年、マーケティンググループ本部長、03年、執行役員、05年6月に代表取締役に就任。同年から(社)日本レコード協会マーケティング委員会副委員長を務め、現在に至る。

インタビュー

「STOP! ILLEGAL COPY~違法コピー撲滅~」キャンペーン

日本レコード協会では2008年1月1日から3月31日まで、違法コピー撲滅キャンペーンを実施中。協会会員全社が店頭ポスターにその告知コピーを入れるなど、業界あげての展開で、一般ユーザーへの浸透も進みつつある。キャンペーンの先にある“需要拡大”をも視野に入れ、推進役を務める同協会マーケティング委員会・副委員長の古澤清氏にうかがった。

基本は“音楽創造のサイクルを守る”

――ご承知のとおり、ここ最近のレコード産業は、音楽配信が伸長し、DVDも漸増から横這いなのに対し、CDは落ち込み幅が少なくなってきたとはいえ、依然厳しい状況が続いています。しかし、産業全体の売り上げ構成からみると、CDは断然高い比率を占めており、レコード産業の最重要商品であることには変わりありません。こうした状況を踏まえ、今回、CD売り上げの阻害要因の一つでもある違法コピーの問題に取り組まれているのだと思いますが、まずは今回のキャンペーンの趣旨についてお聞かせください。

古澤:RIAJ(日本レコード協会)が今掲げている大きな目標は、レコード産業の復活を果たすということです。すなわち、いかに需要を拡大するかということがいちばんの大きなポイントです。その目標を受ける形で、各論的にはさまざまなテーマがありますが、マーケティング委員会はRIAJの4つの委員会の中でもっとも販売環境の審議を図るセクションになります。当委員会の委員全員が需要拡大を強く願い、その一環として今回実施しているのが「STOP! ILLEGAL COPY~違法コピー撲滅キャンペーン~」です。

――市販の音楽CDからの違法コピーについては、これまでもさまざまな調査をされてきたかと思いますが、現状としては、どのように捉えていらっしゃいますか?

古澤:CD-Rの販売枚数、その中で、どのくらいが私的録音ではなくて、違法コピーされているのか。当協会を中心に調査を行っていますが、ブラックとグレーの境目が広くてこれは難しいんですね、統計の取り方が。類推の範囲ではありますが、相当数に上るだろうというのが私どもの見方です。

――キャンペーンに当たっては、単に“違法コピーをやめよう”ではなく、その趣旨が一般ユーザーに納得し易い形で届くことも大切です。

古澤:これは全メーカーで話し合ったのですが、その基本はやはり“音楽創造のサイクルを守る”ということです。音楽産業は、アーティスト、クリエーターの皆さんが業界に入って音楽を作っていきたいと望む、夢と希望のある産業です。彼らが創造した音楽はレコード会社やCDショップなどを通って一般ユーザーの元に届くわけですが、そこには正当な対価が払われる必要があります。それが次の音楽作りに生かされるわけですから。この創造のサイクルが違法な行為によって断ち切られるということがあってはならないのです。アーティストの皆さんが希望をもって入ってこられる業界にするために、まず創造のサイクルを断ち切らせないということを強く訴えかけたいです。基本的には他の産業、ゲームでもアニメでも書籍でも、みんな同じだと思います。

写真:古澤 清氏

Photo/Shinya Yamada

全社全アーティストの告知ポスターにキャッチコピーを

――具体的なキャンペーンの展開についておうかがいします。1月から3月までの3ヶ月間がキャンペーン期間となっていますが、その間、節目節目でどのような活動を行っていく予定になっているのでしょうか。

古澤:第1弾として、1月1日以降の店頭着の当協会会員全社の店頭ポスターすべてに共通のキャッチコピーを入れています。全メーカーが一致団結して、ポスターにこういったコピーを入れるということは、おそらく音楽産業始まって以来、告知ポスターというものができて以来、初めてのことだと思いますね。プラス、各社の新譜案内にも、もちろん協会の機関誌にも、同じコピーを入れています。それから、大型チェーン店さんが作られているフリーペーパーの広告スペースにも、各チェーン店さんのご厚意で1、2、3月と3ヶ月連続して、無料でキャンペーン広告を掲載していただいています。もっと細かいことで言いますと、各レコード会社が宅配便等を発送したりする際に、段ボールを梱包する荷造りテープがありますよね。そこに“違法コピー撲滅”、“違法コピー撲滅”と印刷されたテープを作って、各社にお分けして、今使ってもらっています。お店さんはもちろんのこと、メーカー全社、すべての人が共通認識を持って取り組んでいきたいと思います。

――全社の告知ポスターに商品告知以外の情報が入っているというのは画期的です。今回のキャンペーンに取り組む各社の姿勢がうかがえます。

古澤:インディーズさんに関してはわれわれおつきあいがないものですから当協会からはお話はしていないのですが、ただし加盟各社の中で受託でインディーズさんとおつきあいされているところは、各社さんから話していただいています。ですから、お店さんに送られてくるポスターは、ほとんど全部キャンペーン告知が入っていると言っても過言じゃないと思います。あと、銀座の山野楽器さんが中心ですが、違法コピー撲滅の啓発用冊子を2万部ほど作りまして、お店に置いてもらっていますし、店頭用カウンターポップもCDVジャパンさんの協力を得て、これからレンタル店さんにも設置していただけることになりました。今後、タワーさんでは違法コピー撲滅専用のポスターを全店で展開していただくことになっています。

――お店のほうもかなり積極的に動いてくれていますね。

古澤:日レ商(日本レコード商業組合)の田中(義雄)理事長以下大いに賛同していただいています。これからカウンターポップも全店に設置いただきますし、独自に積極的に打ち出していただいているところもあり、大きな運動の手応えを感じています。ポスターについて言えば、通常のアーティストのポスターの中にこのキャッチが入ってきますから、メーカーの制作、宣伝陣営も否が応でも強く意識していますね。同時にプロダクションの方々も、所属アーティストの告知ポスターを目にしますので、こういう形で出るのかと、よりキャンペーンの実施を意識していただける状況になってきています。


アーティスト、メーカー、関係団体の垣根を越えて

――アーティストにとっても重要なキャンペーンだと思いますが、アーティストからの発言はどうなんでしょうか。

古澤:キャンペーン告知の入った自分のポスターを自分で見ることになりますから、アーティストの皆さんからも違法コピー撲滅運動への応援の輪が広がってくるものと信じています。それがテレビの番組などでも自然に出てくればかなり効果があるのではと期待しています。やはり視覚で訴えるということは大きいですね。人気の高いアーティストのポスターに、キャンペーン告知が入っているわけですが、これが純粋に広告だとすると相当高い金額になりますよね。しかもこれを全メーカーが入れるということは、広告料換算してみるとたいへんな金額なわけで、それだけ宣伝効果の高いツールと自負しています。これを各メーカーが無料でやっているんです。

――メーカーの垣根を越えてとか、利害を超えて取り組んでいこうという意志の表れですね。関係団体との連携も重要かと思われますが、その実際は?

古澤:キャンペーンの基本的な方針を当委員会でまとめた後、(社)日本音楽事業者協会さん、(社)音楽出版社協会さん、(社)音楽制作者連盟さんに事務局からご説明にうかがわせていただきました。一様に、みなさんから温かく賛同していただきました。連携ということでは、今回のキャンペーンを通じて、音楽産業を守りたいという気持ちは一緒であり、益々、強い連携を感じています。

たばこを吸う私が言うのも何なんですけど

――3ヶ月間キャンペーンを実施して、いちばん知りたいのはその効果ですね。日本レコード協会でも意識調査をされていますが、その中で特に注目している点がありますか。

古澤:当協会では今、マーケット調査をやっているんですが、調査に協力してくれる人はいい人(意識の高い人)が多いので、本当に掘り下げた実態というのは掴みづらいんです。ただ、そういうデータの蓄積は必要だし、今後への指標にもなるかと思います。3ヶ月キャンペーンをやった後、どのような意識変化があったか、どの程度浸透したのかということは調査していく予定です。また、委員全員、16社で今後の展開どのようにやっていこうかという話にもなるかと思います。キャンペーンは一過性のものではなく、山を作っていく必要はありますが、やはり、長い時間をかけて、禁煙の運動と同じように継続していかなくてはいけないものだと思っています。たばこを吸う私が言うのも何なんですけど、これだけたばこは良くないということが浸透してくると、JTさんには申し訳ないんですけど、やっぱり喫煙者は減ってきていますよね。路上喫煙も違法となり激減しているようです。やはり、すぐに変わるわけではないのですが、啓蒙活動は時間をかけてやっていく必要があります。音楽創造のサイクルをきちんと守ろう、と言い続けなければいけないですね。

音楽をリスペクトするということ

――今回のキャンペーンはCDの違法コピー撲滅を啓蒙するものですね。同じように、今、モバイル、ネットでの違法行為も増えていますね。

古澤:違法コピー撲滅キャンペーンはマーケティング委員会が実施するものですから、販売店さんとどう展開していくかということに主眼に置いた活動になります。ご承知のとおり、当協会では前々から“Respect Our Music”という大きなキャンペーンを展開しており、今回のキャンペーンもそれに連動したキャンペーンのひとつという位置づけです。また今年はモバイルの違法配信対策として、携帯電話の主要ユーザーである若年層をターゲットとした「携帯音楽を守りたい」キャンペーンも展開しています。

――キャンペーン期間の3分の1が過ぎましたが、手応えのほうはいかがでしょうか。

古澤:これは即効性を求めるキャンペーンではなく、じっくり時間をかける啓発活動だと思っています。ビッグ・アーティストから新人まで、それからポップス、演歌といったジャンルを問わず、すべてのアーティストとレコード会社、販売店、関係団体が一致団結して、その趣旨を訴えかけてきたのも、その第一歩です。今回の音楽関係者の運動の高まりが、一般ユーザーに届くものと信じていますし、そしてマスコミ関係者の皆さんからも応援の声が出てくるといいですね。路上喫煙者がどんどん減ってきているように、違法コピーが激減することを願っています。

――音楽が好きな人だったら違法コピーはいけないと認識していると思うんです。ただ、気付かずにやっている人も多い。ポスターなどでキャッチコピーを見て、ハッとする人も多いんじゃないでしょうか。

古澤:正式に文章を書こうと思ったらすごく長くなるんですが、今回“STOP! ILLEGAL COPY”というシンプルなキャッチコピーで訴えることによって、たぶんわかるユーザーの方がいると思うんです。本当はいけないことをしているんだと。この短い文章の中から感じてもらえればと思っています。さらに興味を持った方は、協会のホームページなどでも、詳しい説明をしています。そういう形で徐々にキャンペーンの趣旨が浸透していけばいいと思っています。アーティストを守ろう、音楽を守ろう、大好きな音楽はパッケージであれネットであれ、正規の形でお金を出して買いましょう。これは音楽業界に携わる人全員が思っていることじゃないでしょうか。これが音楽をリスペクトするということだと思います。

(インタビュー・文/高橋礼三郎)

オリジナル コンフィデンス

※この記事は、ORIGINAL CONFIDENCE 2月18日号に掲載されたものです。