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著者が語る、エンタメ業界・スキルのツボ
)1作目をテレビで視たばっかりに、最後は映画館へ。海賊ジャック・スパロー恐るべし

DVDが発売され、しばらくするとテレビで放映される。特にシリーズものは、新作が登場するのにあわせて、前作がテレビで放映されていないだろうか?

テレビで、3作目公開の直前に、1作目が放映されたのを視聴したら、ついつい続きが気になり、2作目のDVDを借りに。それを観たら、今度は「オオダコに襲われたJ船長は、ピンチをどう切り抜けたのか?」気になって、うっかり三作目は映画館に行ってしまった。製作委員会やそのメンバーであろうテレビ局としては、してやったりというところか。

このように、劇場上映から、DVD、そしてテレビ放映というように、それぞれの映し出す窓を移し、その窓ごとに最大の収入が出るよう時期をずらしながら順を追って公開する。こうすることで、前回説明したマルチユースの効果が最大限に発揮される。

絶妙なタイミングで、徐々にウィンドーをずらす

これを「ウィンドー戦略」という。現実には、もっとウィンドーの種類はあり、「DVDレンタル」「有料放送」「無料放送」などがある。DVD、DVDレンタル、有料放送、無料放送、キャラクターグッズ、ゲーム化、出版化など、劇場でヒットすると、2次利用でもヒットするので大きな儲けとなる。

2次利用のいろいろとウィンドー戦略
映画ビジネス、ホントにおいしいの?

一回作れば、何回もおいしそうな映画ビジネス。しかし、社団法人日本映画製作者連盟によれば、2007年に公開された邦画407本中、10億円以上の興行収入になった作品はたった29本。ではそこそこの製作費・宣伝費をつかって、そこそこの興行収入の場合は、どれくらい儲かるのだろうか?

5億円で映画をつくり、P&A費に2億円使い、50万人の観客動員だった場合の興行収入は、入場料を平均して1,500円とすると、1,500円×50万人で、7億5,000万円。このうち約半分ほどが映画館の劇場収入となるので、残りの3億7,500万円が配給収入。この中から、配給会社があらかじめ払ったP&A費2億円と配給手数料を取る。ここも仮に20%とすると、1億7,500万円×20%で3,500万円。

最終的に、製作委員会に残されたお金は、3億7,500万円-2億円-3,500万円で、1億4,000万円。

もし、この映画の製作費の10%にあたる、5,000万円を出資していたら、自分の分け前は、1億4,000万円×10%=1,400万円。

あれれ?

5,000万円出資したのに、3,600万円も赤字ってこと?

製作費5億円で50万人の動員では?
興行10億円以上なのは、407本中29作品・・・1割にも満たない
順位 公開月 作品名 興収
単位:億円
配給会社
1 9月 HERO 81.5 東宝
2 7月 劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール
ディアルガ VS パルギア VS ダークライ
50.2 東宝
3 11月 ALWAYS 続・3丁目の夕日 45.6 東宝
4 7月 西遊記 43.7 東宝
5 06/12月 武士の一分 41.1 松竹
6 11月 恋空 39.0 東宝
7 3月 ドラえもん のび太の新魔界大冒険 7人の魔法使い 35.4 東宝
8 1月 どろろ 34.5 東宝
9 3月 アンフェア the movie 27.2 東宝
10 4月 名探偵コナン 紺碧(ジョリー・ロジャー) 25.3 東宝
11 10月 クローズ ZERO 25.0 東宝
12 4月 ゲゲゲの鬼太郎 23.4 松竹
13 06/12月 大奥 22.0 東映
14 6月 舞妓Haaaaan!! 20.8 東宝
15 9月 エヴァンゲリヲン新劇場版:序 20.0 クロック
ワークス
16 4月 東京タワー オカンとボクと、時々オトン 18.8 松竹
17 06/12月 劇場版 どうぶつの森 17.0 東宝
18 8月 Life 天国で君に逢えたら 17.0 東宝
19 4月 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾 15.5 東宝
20 3月 バッテリー 15.3 東宝
21 1月 愛の流刑所 13.9 東宝
22 3月 蒼き狼 地果て海尽きるまで 13.9 松竹
23 8月 劇場版 仮面ライダー雷王 俺、誕生!
雷影版 獣拳戦隊ゲキレンジャー ネイネイ!ホウホウ!香港大決戦
13.8 東映
24 06/12月 NANA2 12.5 東宝
25 5月 眉山 びさん 12.1 東宝
26 8月 劇場版 NARUTO ナルト 疾風伝 12.1 東宝
27 6月 大日本人 11.6 松竹
28 1月 それでも、ボクはやってない 11.0 東宝
29 5月 俺は、君のためにこそ死ににいく 10.8 東映
(社)日本映画製作者連盟HPより作成
厳しいリクープの現実

投じた費用を回収することをリクープというが、上映の収入だけでリクープするのは実は、かなり難しいのだ。

けっこうな制作費、そしてそこそこのP&A費、中くらいの観客動員数でそれ以上ののびがないと、元がとれないのである。そのため、2次利用による収入などによって、カバーして製作費を回収するわけだ。

だが困ってしまうのが、興行でこけると、テレビ放映もこけるし、DVDもこけてしまうのである。一粒で何度もおいしいということは、その一粒がまずい場合、何度もまずいということになる。

そうでなくても、比較的ヒットしやすいと言われているTVゲームソフトからの映画化でさえこけてしまった例もある。『ファイナルファンタジー』の映画は、制作費1億3,700万ドル(157億円)に対して全米での興行収入は3,200万ドルという、ギネス級の大赤字を出してしまったのだ(詳細は、ぜひ本書で!)。

製作費5億円で50万人の動員では?
映画は赤字。でも会社は黒字?! 映画は赤字、でも会社は黒字?!

とっくに映画製作会社はつぶれているはず。それでもなくならないのは、なぜ?


最初の例で考えると、2次使用による収入がその10%の7,500万円であったとすれば、儲けは、7億5,000万円(興行収入)-3億7,500万円(劇場料)-2億円(P&A費)-製作費(5億円)+7,500万円(2次使用収入)=2億5,000万円(赤字)

もし、製作費の10%を出資していたとすると、2億5,000万円(赤字)×10%=2500万円の赤字になっている。


しかしたとえば、製作費の10%を映画館の運営会社、たとえば東宝シネマズのような会社が出資していると、この会社にとっては、劇場料3億7,500万円の収入があるのだ。

すなわち3億7,500万円(劇場料)-2,500万円(製作委員会としての赤字)=3億5,000万円の黒字になる。

また、配給会社が10%を出資している場合は、映画のプロジェクトの儲け意外に、P&A費が収入になっている。1億円を広告代理店へ払っていたとすると、2億円(P&Aによる収入)-1億円(広告代理店などへの支払い)-2,500万円(製作委員会としての赤字)=7,500万円の黒字となる。

テレビ局が10%出資している場合には、テレビ番組として放映したときに集めたスポンサー料が新たな収入源になる。

1億5,000万円のスポンサー料を集めることができたとすると、1億5,000万円(スポンサー料)-7,500万円(2次使用料)-2,500万円(製作委員会としての赤字)=5,000万円の黒字となる。


製作委員会のメンバーは、プロジェクトからの直接の儲けのほかに、映画の製作、興行、流通など、それぞれの得意パートの収入を得ることができる。そのため、プロジェクト自体では、赤字になったとしても、全体でみると黒字になるのだ。

『サルの惑星』の舞台を砂漠に変更。リスク回避

だからといって、興行収入があまりにも少ないと、本当に赤字ということも当然ある。

2007年に上映された洋画403本中、興行収入10億円以上のものはわずか22本なのである。このことからも、このビジネスの厳しさは明らかだ。

そこで、映画会社は1年のうちに何作品かつくることで、全体として利益がでるように、リスクを分散している。1963年公開の映画『クレオパトラ』を公開した20世紀フォックスもギネス級の大赤字を出したが、次回作『猿の惑星』で大幅な舞台経費の削減をしたところ、祖末な感じが逆に味となり大ヒット。その収益のおかげで、会社はなんとか持ち直すことができた。こうして、別の作品をヒットさせることで、赤字を回避するという方法がある。

 『猿の惑星』で赤字をカバーしたわけだが、そんな『猿の惑星』ではペプシとのコラボでオリジナルのペットボトルキャップのキャンペーンを展開したり、フィギアを販売したりと、手広い展開を見せていた。1本の映画をつくると、マルチユースにより、上映やDVD以外にもさまざまな展開が考えられる。次回は、映画の上映自体は儲かったのか?DVDは儲かったのか、フィギアは儲かったのか?といった、内訳ごとの儲かりを把握するにはどうするか、映画ビジネスの『費用配分』について、その秘密に迫る!!

興行10億円以上なのは、407本中29作品・・・1割にも満たない
順位 公開月 作品名 興収
単位:億円
配給会社
1 5月 パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド 109.0 WDS
2 7月 ハリーポッターと不死鳥の騎士団 94.0 WB
3 5月 スパイダーマン3 71.2 SPE
4 06/12月 硫黄島からの手紙 51.0 WB
5 8月 トランスフォーマー 40.1 UIP
6 6月 ダイハード4.0 39.1 FOX
7 7月 レミーのおいしいレストラン 39.0 WDS
8 3月 ナイトミュージアム 35.7 FOX
9 8月 オーシャンズ13 32.0 WB
10 11月 バイオハザードIII 28.5 SPE
11 1月 幸せの力 27.1 SPE
12 06/12月 007/カジノ・ロワイヤル 22.1 SPE
13 1月 マリー・アントワネット 21.0 東宝東和/
東北新社
14 4月 バベル 20.0 GAGA
15 2月 ドリームガールズ 19.2 UIP
16 06/12月 エラゴン 遺志を継ぐ者 18.7 FOX
17 11月 ボーン・アルティメイタム 16.5 東宝東和
18 6月 300〈スリーハンドレッド〉 15.6 WB
19 1月 ディパーテッド 15.6 WB
20 3月 シュレック3 15.5 アスッミックエース
21 3月 ハッピーフィート 14.5 WB
22 3月 ホリディ 13.3 UIP
(社)日本映画製作者連盟HPより作成
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著者・Bookのご紹介
松尾里央

著者:松尾里央(まつお りおう)

(株)ナイスク常務取締役。早稲田大学政治経済学部卒。税理士として、財務経理業務、専門学校で講師を行う一方、本づくりの楽しさに魅せられ、同社で出版・映像制作に携わる。
同社は、スポーツ事業部としてオーストリアスキー教室6校、ナイスクテニス教室を主宰。また、出版事業部として、ビジネス、趣味、スポーツ、健康など実用系の雑誌・書籍を制作。映像制作事業部としてテレビ番組やCM、ビデオの制作。
ヤングキャリアーセンターなどで出版業界就職セミナーを講演するほか、著作に、進化型ビジネス用語辞典『ビジ単』(双葉社)、『企画立案完全マニュアル』(双葉社)、『小さな会社のそのまま使える社内文書実例185』(成美堂出版)などがある

あの映画は何人みれば儲かるのか?

『あの映画は 何人みれば 儲かるのか?』

【発行日】2008/11/1
【著者】松尾 里央(まつお・りおう)
【本体価格】1,300円(税込1,365円)
【発行】TAC出版
【ジャンル】ビジネス書
【ISBNコード】9784813230694